メモ

ここ1、2年くらいは拡散の時期というか、やってみたいことや、外側へ発信してみるというようなことを、なるべく心がけてやってきたけれど、それはそれで収穫があり、面白かったり、新しく知り合う人があったりと、得るものも多かった。
ただ、自分の創作、ということに関していうと、やはりもう少し内省的というか内側に向かっていかないと思うようなものができ辛い感覚もあった。
去年から今年にかけて、いままでよりはハイペースにいろいろと書いてきて、技術的なもののほか、いろいろとテーマとなるべき意識や短編などでも膨らませることができそうなものを見つけられたので、集束して結果につなげていきたい。

短編小説について

おやつを食べながら、不意に自分の中で印象に残っている短編小説は何だろうか、と考えてみて思い浮かんだもの。

ガルシア=マルケス「光は水のよう」
安部公房「手」

この2つは決定的に外せない。
自分の中で理想の短編といえばこの2作品。

筒井康隆「九月の渇き」「遠い座敷」
日影丈吉「猫の泉」
江戸川乱歩「お勢登場」
コルタサル「南部高速道路」

褪せずに印象に残り続けている作品はこんな感じ。
「九月の渇き」と「南部高速道路」はパニックものという点でちょっと残り方が似ているかもしれない。
「猫の泉」というか日影丈吉の文章は自分の中で一番綺麗だと感じられた文章だった。
「遠い座敷」は延々と続いていく座敷のイメージが鮮烈だったため。
「お勢登場」は閉所恐怖症の自分にとってはかなり怖い作品だった。

どちらかというと窮地に立ったり、抜けだせずに追い詰められるような作品が印象に残りやすいのかもしれない、と思った。

メモ

私人―ノーベル賞受賞講演
私人
 
「言語のほうこそが、自らの存在を継続させるための手段として私人を使うのです。」
 
「詩作が意識や、思考、世界感覚の巨大な加速器だからです。……それはちょうど、麻薬やアルコールに溺れて行くようなものでしょう。」
 
「自分に与えられた亡命という経験を、あくまでも『生を拡張し、遠くを見ることの訓練』のために使ってきた。」

メモ

■自由への道(二)
自由への道〈2〉 (岩波文庫)
126頁
「きれいだよ」と彼は言った。
「そんなことないわ」とイヴィックは笑いながら言った。「それどころか、おそろしいほど醜いの。これがわたしの秘密の顔」
「ぼくはこっちのほうが好きだ」とマチウは言った。
「それじゃあ、明日はこの髪型にします」と彼女は言った。

 この数行を読むまでイヴィックには全然魅力を感じていなかったのだけれど、直前の過程と合わさって他愛のないやりとりがとても魅力的に演出されていて秀逸だった。
 そしてこのあと、明日になったときの会話もなかなか。

メモ

 新しく描こうとしている小説の前半部分を早速読んでもらい、ちょっとした意見をもらったので、それを参考にしつつ、まずはラストまでのプロットを立てて、人称についての構成を洗練し、文章は何度か読み返しながら馴染んだものにしていく。
 おそらく週末に打ち合わせることができそうなので、それまでに簡単にでもプロットをまとめる。
 あとは作中で使用する音楽について、もう少し勉強しておいたほうがいいという話になったので、その関連についても少し調べておきたいところ。
 お互いの見解が一致を見たのは、分量がおそらく原稿用紙500枚程度にはなるだろうな、ということで、それだとおそらくこれまで書いたものの中では最長になるので、根気強く挑んでいきたい。
 妥協せずに丁寧に仕上げれば、相当いいできになると思うので、粘り強く取り組もう。
 プロットだとか、分量だとか、自分がそういったことを考えながら物語を書くことができる、ということが嬉しいというか、楽しいというか。
 これまで漫然と書いていて、それはそれで気持ちの良い体験なのだけれど、かっちりと組み立てて書く安心感というか、その強固さに寄り添いながら書くことができるというのは、コツコツ書いていくのにはやはり最適だ。

とある絵


 高校生のころに美術の授業で描いた油絵があった。
 課題はよくあるもので、場所を決めて数週間かけて校内の風景を描くというものだった。
 雨が降ったときでも場所を変えることなく、また季節の変化や陽の光の具合に影響を受けない場所を選びたいと思い、屋根のある渡り廊下に設置されていた、自動販売機を描くことに決めた。
 美術の授業は二時限連続で行われていて、私がイーゼルを立てて一人ぼっちで絵を描いている渡り廊下を、授業の合間に移動するたくさんの学生が通っていった。
 知人や友人、部活動の先輩たちは、何故こんな場所で自動販売機を描いているのだろうかと、興味を持ってくれたのか、呆れていたのか、通るたびに声をかけてくれた。
 はじめのうちは真面目に描いていたのだけれど、次第に完成に近づいて行くにつれて、見本の缶の模様や文字などといった、細かい部分を丁寧に仕上げるのが面倒くさくなってしまい、完成した絵はどこかぼやけたような印象になってしまった。
 そうして仕上がった絵は、家に飾っておくには味気なくて、かといって仕舞っておくには大きすぎた。
 祖父のところに送っておけば、孫の描いた絵だといって喜んでくれるだろうと、とりあえず母の実家へ送りつけておいた絵が、そのあとどうなってしまったのか、すっかりその存在を忘れたまま、ずいぶん長い時間が過ぎ去っていた。
 そんな絵と予想外の再開を果たして、それが今までどうやって保管されていたのかということについて、昨日不意に知らされた。
 祖父の家に送られた絵は、何故かそれを見つけた叔父の気に入ったらしくて、叔父は「これは僕のために描いてくれた絵だから」と言って、引っ越しのたびに持っていって、机の上のよく目立つ場所に飾っていてくれていた、というのだった。
 その絵を描いていたときに、叔父のことなど考えていなかったし、祖父の元へ送ったときにも、叔父の気に入るなど予想もしていなくて、そしてそれをずっと叔父が持っていてくれたということを、想像したこともなかった。
 決して上手いわけでも、綺麗なわけでもない油絵の、どこを気に入ってくれたのか、是非とも聞いてみたくって、叔父に尋ねてみたいと思った。
 もう長いこと、ちゃんとした絵など描いていなくって、自分に上手い絵が描けるとは、ちっとも思っていないのだけれど、誰かの気に入るものや、誰かに大切にしてもらえるものを創造するということに、必ずしも上手さだとか、美しさといったものは必要ではないのかもしれない、とほんの少しだけ、自分の表現したい世界が広がったように感じられた。
 私がそのことを知ったのは叔父の四十九日の集まりだった。だからどんなに望んでも、私はその絵の何が叔父を引きつけたのか、知ることができないのだ。
 でも、もしもこの機会に絵の在処を知ることがなかったなら、恐らく一生、この絵のことを思い出すことはなかったと思う。

メモ

次回作の構想。


ぼちぼち以前書きかけていたものの読み返しが終わりそうなので、書き込んだ赤字、および練り直すべき個所をとりあえず整理し、それから続きとなる部分もプロットを作って書き進める。登場人物の設定をもう少し詰める。
・書き進めるために参照する関連書
「いじめ」「大麻」「童話」「音楽」
・目的
エンターテインメント系
青春寄り文学系


上記とは別。どちらかといえば自分の中ではライトノベルを意識した作品。少し1クールのアニメを意識した構成にしたい。おおよそのストーリーは出来上がっているので、細部を詰めるためにアウトラインを作成する。多分、アウトラインさえしっかり作り込めれば、分量を適切に配分してスムーズに書き上げることができるはず。
・書き進めるために参照する関連書
「格闘」「剣術」「狙撃」
・目的
ライトノベル
ノベルズ系


次回のイベント出展用の短編。
「水道」「ラップフィルム」「エレベーター」「水煙草」。
とりあえずの4つ。これだけでは足りないと思われるので、個人的に書けそうなものはどんどん書いていく。

■現状の整理
1.これまでに意識的に削ろうとしていたもの
「性別」
「会話」
「名前」
こうして並べるとキャラクター性みたいなものを排除しようとしていたのかもしれない。それはライトノベルを書くのに苦戦するわ……。
この辺については、だいぶ納得して取り入れることができるようになってきた。というよりは、自分の書きたいものがはっきりしてきたので、それに必要な要素として許容できる範囲がわかりはじめてきたし、抵抗感もだいぶ薄れてきた。けれども少し調子に乗ったり油断すると、また傾いてしまいそうなので、気をつけたい。
ときにはこういうものを意識的に排したものを書いていくのも、自分の本質を見つめなおすのには良いかもしれないので、たまに挑戦してみるかもしれない。

2.文章表現として関心の低いもの
オノマトペ
「比喩表現」
「奇抜さ・実験性」
最初の二つについては、もうかなり早い段階からあまり興味がないので、今後もおそらくそれほど変わらないと思われる。比喩表現については直喩はとくにこだわりなく使うけれども、凝っていたりわかりにくい隠喩みたいなものはなるべく避けていきたい。
奇抜さについては、文学にかぶれて書きはじめたころにはいろいろ考えていたように思うけれど、普通に書いていても考え抜いた物語がしっかりとさえしていれば、それが自然と個性になる、というのが書いたものに現れるようになってきて、意識しなくなった。
どちらかというと実験的なにおいを読者に感じ取られてしまうと、恥ずかしいような気もする(自分が何かを読んでいて、そういうにおいを感じると何だかこそばゆく感じる)ので、なるべく自然に読めるものを書きたい。

3.文章への希望
読み易さ、リズム。
文章は幼稚になりすぎず、それでいてなるべく平易に。どちらかといえば物語に集中して楽しんでもらいたいので、その妨げとなるような文章にはけっしてしないように。しかし、安っぽくはならないように気をつける。
リズムをもっと意識する。音楽的とまでは、まだいかなくても、読者がノッてくれるような文章にしていきたい。
リーダビリティに関しては、自分で作るものについては組版や書体のレベルから、いろいろと試行錯誤を重ねながら改良していきたい。
とにかく、本当に、物語を読んでもらいたいので、いかにしてそれを抵抗なく受け入れてもらえるかが、大きなテーマとしてある。

4.イメージ
自分の書いたものについて、他者からもらった感想の一つに「冷たくて優しい」というものがあって、この言葉がずっと自分の中に大きく居座っている。
冷たくて優しい、という感想、たぶんかなり本質を突いているように思う。対人的な距離の取り方や、不器用さ、できること・できなこと、それらをひっくるめて、どう見えたり感じられたりするのかとイメージしたときに「冷たくて優しい」というのはすごくしっくりとくる。
この感覚は、大切に表現していければいいと、思っている。

5.小説
作品を創造している、その作品は小説である、小説の体をとった物語である。自分の書きたいもの、表現したいものは、物語である。
物語を、なるべく本来の形に近いままに描き出す方法として、文章を書く、という方法を選んでいる。今のところ自分に可能な範囲で、もっとも適切な方法が書くことである。